あこがれ色彩 私の色は、混じりあえない

中島セナ
MEGUMI
大迫一平
宮内麗花
安原琉那

監督:小島淳二

2023年 冬公開
OFFICIAL SELECTION PORTLAND FILM FESTIVAL 2022
陶芸の街で生きる少女の純枠性と儚さを描く。

Synopsis

伝統的な焼き物の街。そこに14歳の結衣(中島セナ)は父 信夫(大迫一平)と祖母と三人で暮らしている。美しいと感じたものを、自分の色使いで絵に描くことが唯一の楽しみで、時間があればスケッチブックに絵を描いている。放課後には美術教室に通うが、自分の個性を出すのではなく基礎の知識や技法を重視する指導には馴染めずにいる。

陶芸工房に材料などを配送する仕事をしている父親の信夫は、仕事先で知り合った若い絵付け師・美樹(宮内麗花)に好意を抱き、彼女に積極的なアプローチをする。美樹は伝統的な絵付け技法の修行をしながら、若い感性を生かした新しいデザインを作り出し、自分の店を持ちたいと夢見ている。

ある日、偶然同じバスに乗り合わせたことで、結衣は美樹のデザイン画を目にする。その独創的なデザインにシンパシーを感じた結衣は、自分が描きたい絵を描けばいいのだ、と気がつく。一方、信夫と親密になった美樹は、信夫たちの家を訪れるようになり、結衣の絵に触れることで、その純粋な色彩への愛情に感銘を受ける。二人は創作活動を通じて親しくなっていく。

美樹が絵付け師として独立するには、公募展で入賞することが必要だった。応募作品の制作に取りかかった美樹は、入賞を約束された古典的なデザインか、自分独自のデザインか、どちらを選ぶべきか葛藤する。結衣は、美樹らしい個性的なデザインがいいと勧める。しかし、美紀が実際に応募したのは、古典的な作品だった。憧れの作家だった美樹が、自分の意志を貫かなかったことに、結衣は強いショックを受ける。

さらに、美樹が信夫からお金の補助を受けているという事実を知り、信夫を利用され、裏切られたと感じる。

激しく動揺した結衣は、中学生の友人たちとともに、美樹に対して復讐の計画を立てる。

From Director

絵を描くこと。

花や景色など自然を美しいと感じることと、人間の創造物を美しいと感じることは、なにが違うのだろうか?

作品を美しいと感じる、つまり、作者のイマジネーションの過程を読み解く、あるいは作者に共感することのできる感性は、人の感情の中で、もっとも人間らしい柔らかい部分だと思う。美しさを感じる心は、言葉より深く信頼できる。

主人公・結衣は、絵付け師の美樹と出会い、美樹の描く絵に好感を持つ。勇気を出して今まで描いた絵を美樹に見せる。絵を褒めてくれた彼女に結衣は心を開く。唯一信じた大人。

私が育った佐賀県西部は、江戸時代から続く焼き物の産地として有名な所です。幼い頃は、町に100を超える窯元があり、焼き物を生業にしている人がたくさんいて、とても活気がありました。

当時の私は、焼き物には全く関心がありませんでした。薄い白磁に赤色を使って、筆で細かく描かれる有田焼の絵柄やデザインの面白さに気がついたのは、40歳を過ぎてからのことです。しかし、その頃には、手の込んだ絵柄より、合理的に作られたシンプルな焼き物に需要が移り、売上は減り、技術も町も衰退していました。手の込んだ絵柄の焼き物は高価で好きな食器を選ぶほど余裕を持って暮らせる人は少なくなっています。

結衣のような柔らかい心を持った人が、生きにくい社会だと思う。合理的に効率よく利益を産むことを重視され、人と人さえ利害関係で群れる。深く人と関わらない。ユイの父親ノブオも、自分の欲望を優先して、表層的にしか結衣と関わらない。子供は、生まれてくる親を選べない。結衣は、深い孤独の中にいる。

大袈裟ですが、この映画が美しさとは何かを考えるきっかけになることを願っています。

Director Junji Kojima

Filmography

映画
2004年
「Jam Films 2 机上の空論 The Japanese Tradition -kosai- 交際」Short FILM

2005年
「The Japanese Tradition 日本の形」DVD

2018年
「形のない骨」劇場映画第72回ワルシャワ国際映画祭コンペティション部門にノミネート

出品歴及び受賞歴
「The Japanese Tradition -DOGEZA- 土下座」
第21回 ASIAN AMERICAN FILM FESTIVAL (2003) 正式招待 第43回 Cracow Film Festival (2003) 正式招待

「机上の空論 The Japanese Tradition -kosai- 交際」 RESFEST (2003) AUDIENCE CHOICE AWARD 受賞

「The Japanese Tradition -shazai- 謝罪」
第57回 ベルリン国際映画祭 (2007) 短編コンペティション部門ノミネート

「形のない骨」劇場映画
第72回 ワルシャワ国際映画祭(2018) コンペティション部門ノミネート